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導電性ポリマー / ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン

PEDT / PEDOT

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理由としては 屈折率の差からきておりITOの屈折率は 2.0, PEDOTは 1.5 でした。


光の取り出し効率が屈折率の差から来ています。

PEDTの性質

ポリチオフェンやポリピロールは、3位および4位における枝分れ置換は、不溶性と非溶融性となるネットワークを生成します。

モノマーの
3位と4位が事前に使用されていると架橋は不可能となります。

ポリピロールやポリチオフェンのような導電性ポリマーは、正の電荷を有するので、正電荷生成誘導電効果を有する置換基は正電荷を安定化し、従ってポリマーを安定化します。


この場合酸素を使用すると、複素環式の環面の共平面上の配向は、加熱により損なわれません。

3,4エチレンジオキシチオフェン(EDT)のモノマーは、チオ二酢酸塩から3ヶ月かけて5段階の反応で合成されます。

アセトニトリル中の塩化鉄(III)を用いる酸化重合により5-10 /cmの紺青色の粉末になります。

ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDT)は、ポリピロールよりはるかに安定です。

同じ条件下でコーティングしたフィルムを
100℃でエージングさせるとPEDTのフィルムの表面抵抗は実質的に変化しませんでしたが、ポリピロールのフィルムは上昇が認められました。




帯電防止コーティング

すでにヨーロッパでは、写真フィルムのネガフィルムの帯電防止層に、10年以上使用され年間2億m2コーティングされています。

現在Baytron P(PEDT/PSS)は、韓国や日本で電子部品の帯電防止のためのキャリアテープ、電子トレイ TABテープのスペーサーテープ また光学フィルムにコーティングされ使用されています。

特に性能重視のニッチなマーケットでの使用が多くなってきています。


最近は、カーボンブラックの練りこみのPSのキャリアテープでカーボンの脱離によるコンタミの問題になっています。

また界面活性剤のコーティングされたフィルムは、透明であるが永久帯電ではなく湿度依存性が高い点が問題です。

この問題の解決するために透明で不純物の溶出が少ないPEDTはこれから使用が多くなっていくと思われます。


PEDT/PSSは、イオン性不純物として NaとSOを主に含んでいます。


これは、重合触媒からきています。通常イオン交換樹脂で除去していますが、標準品でNaが 
400 ppm SO4が 40 ppm存在しています。

延伸することにより表面抵抗の触れが起こる導電性金属酸化物粉末の分散したコーティングの

フィルムに比較するとPEDTのコーティングのフィルムの延伸後の表面抵抗のフレが少ないです



そのためハイブリッドコーティングとして、ATOやZnOなどの金属酸化物とPEDT/PSSとの混

合系での使用が考えられてきています。



欠点になるのが、このPEDT/PSSのディスパージョンの固形分が1.3%であとの溶媒が水の

ため、コーティング剤として密着性と塗膜の硬度がないことです。

ここでバインダーの選択が重要になります。バインダーは、絶縁性を有するため、相溶し硬度と

密着性を向上し絶縁性を損なわない性質が要求されます。

           

韓国のInscon社では、PEDT/PSSをベースにした 帯電防止コーティング材(商品名

コニソル)を販売しています。


韓国の大学教授がベンチャーで始めた企業ですが、Samusung社で広く使われています。

興味のある方は、商品カタログをご参照ください。

インスコン社 コニソルカタログ



                   高導電性コーティング

PEDT/PSSを高導電化することにより、将来ポストITOとして開発も行われ始めています。

Baytron HC V4 や PH 500というグレードになります。PH 500は HC V4の粒子を細かくしたタイプです。

このグレードは Baytron Pとは違い重合を最適化し 後添加で高沸点溶剤を5%加えることで600S/cmまで導電性は到達します。 


通常 PETフィルムで100 Ω
/sq, 透過率83%(乾燥膜厚 200nm) は得られます。


膜厚 Dryで5ミクロンで透過率が、40-50%であれば50 Ω/sqまで到達します。


タッチパネル用途などのITOの蒸着フィルムのフレキシブルディスプレイでは、クラックが予想されますが、この高導電のPEDTのフィルムは曲げにも柔軟に追従します。

高沸点溶剤の DMSO(ジメチルスルホキシド) エチレングリコール NMP (nーメチルピロリドン) を5% 後添加により80%以上の高透明性と、100 ohm/sqs近くの高導電性が得られます。

またグリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコールの添加により導電性が向上することが報告されています。

     

   

BaytronR

  P HC V4

BaytronR

   PH 500

特   徴

PEDT:PSS

ディスパージョン

PEDT:PSS

ディスパージョン (微粒化)

PEDT:PSS 比

1:2.5

1:2.5

導電性 5% DMSO

  後添加[S/cm]

200 - 500

300 - 600

透 過 率
100 Ohm/sq

80

84

固 形 分 [%]

1.0 ? 1.4

1.0 ? 1.3

粘 度 [mPas]

100 - 350

< 30

一次粒子径

   d50 [nm]

200 - 500

20 - 60





有機ELへの応用



1998年頃から 有機ELグレード用途として特殊グレードのPEDT/PSSの開発が始められ


ました。


1998
年には Baytron P AI 4083が上市され固形分は 1.5%で103 Ωcm。


2000年には、クロストーク防止用パッシブマトリックス用で Baytron P CH 8000


上市され 固形分は2.8%で105 Ωcm。


PEDT
/PSSは PEDOT(ピードット)という名前でポリマー系の有機ELディスプレイでは、ポピ


ュラーになってきています。

透明電極である陰極ITOの上に正孔注入のバッファー層として塗布することによりアノード層の


平坦化という機能があります。アノードのポリッシングまたは真空アニ-ルなどの必要はなくなり


、さらにアノードから発光ポリマー層への正孔注入効果を高める機能があります。


これは、PEDT/PSSによって仕事関数を高めて発光層とアノードのエネルギー障害を少なくす


ることにより有機ELディスプレイにおける輝度や低電圧 低電流の改善が行えるようになってき


ました。

PEDT/PSSの仕事関数は5.1-5.2 eVで一般的なITOの仕事関数4.6-4.7 eV程度と


比較すれば正孔注入効率が向上することがわかります。


パターニングの方法としては、インクジェットプリンティングで塗布する方法が一般的に有力にな


ってきています。他には、グラビア印刷、スクリーン印刷などがあります。最近ではレーザープリ


ンターを使用したラインパターニングが発表されて話題を呼んでいます。

スピンコートやスリットコートなどはインクジェットと同じで 粘度は10-20 mPa.sだが、スクリ


ーン印刷やグラビア印刷の場合はペーストやインクにする必要があり、溶剤や樹脂を添加したス


クリーン印刷用ペースト B
aytron SV3も上市しています。

膜厚は、50-100nmで乾燥条件は ホットプレート上で200℃で3分間以上が必要です。

PEDT/PSSの層構造の研究からは、 塗膜の上層はPSSリッチであり、下層はPEDTリッチに


なっていることが判ってきています。また 導電性も厚さ方向と平面方向では厚さ方向が平面方


向に比較して6倍高いというデータも判ってきています。 

高導電PEDT/PSSを ITOの代替に使用し蒸着の有機EL層を積層する事により


パックライトや照明の用途に使用も考え始められてきました。



最近白色照明を目標にユーロ8カ国で 140億円かけて開発している
OLLAプロジェクトでは


青色や緑色の低分子を蒸着で積層した有機ELでは ITOの蒸着した15 Ω/sq18nmの層


よりも
100 Ω/sq200nmPH 500PEDOTの層のほうが20%高い効率と輝度を示しまし


た。

ここ20年間に世界中で導電性ポリマーの開発研究が活発に行われてきました。ポリアセチレンをはじめ、ポリアニリン, ポリピロール、ポリチオフェンらが合成されました。

そして2000 Dr. 白川英樹、Dr. MacDiamid, Dr. Heeger の3氏が導電性ポリマーの基礎的な研究の成果によってノーベル化学賞を受賞しました。

バイエル社(現 エイチ・シー・スタルク株式会社)の導電性ポリマーの開発による社会への貢献もノーベル賞受賞の理由になっています。


このバイエル社の導電性ポリマーの開発の歴史について少し述べます。

背景としてバイエル社の子会社である写真フィルムの子会社であるアグファゲバルト社から、水系で透明で耐熱性がある電子伝導性の帯電防止剤の開発依頼がありました。


そして
1985年に、中央研究所の若き研究者Dr.Jonasらが、ポリチオフェンの誘導体であるポリ3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDT)(商品名Baytron MV2)を合成しました。

1994年からこのポリマーのディスパージョンは、商品名Baytron P(バイトロン P PEDT / PSS )として、大量生産され始めました。

2002年1月からバイエル社は100%子会社のエイチ.シー・スタルク社へBaytronの事業を移管しました。

現在日本では、バイエルグループから離れ エイチ・シー・スタルク株式会社(東京都港区浜松町1-30-5 浜松町スクエア9
F)が販売しています。

  

エイチ・シー・スタルク株式会社

担当 電子・光学材料部 

105-0013

東京都港区浜松町 1-30-5 浜松町スクエア9F

TEL  03-5776-5054   FAX 03-5402-0071

http://www.hcstarck.com

PEDOT/PSS

(Baytron P)


Cathode